カッコいいの定義についてコラム|「カッコいい」の価値観をめぐって

コラム

今から10年前、会社で 「たそがれ研修」 と自分たちで揶揄して呼んでいた研修を受けました。

研修の趣旨はこうです。
「定年後に雇用延長を希望する人間が大半だが、その時の雇用条件や仕事内容を決めるのは現役の人間=つまり現在のあなた方の部下となる。従って、これからの10年は『この人とは一緒に働き続けたい』と部下に思われるような人間になることを心がけましょう」

定年まであと10年となる50歳前後に受講が義務づけられていたため、黄昏世代の節目に受ける研修──それが「たそがれ研修」と呼ばれていた所以です。


デート観のジェネレーションギャップ

そこで、事務局を務めていた人事部の若者たちから 聞いて愕然としたことの一つがありました。
「デートは電車で行って、帰りは路線が分かれるところでバイバイ」

「嘘でしょ?じゃあ、ドリカムの名曲『未来予想図Ⅱ』なんて聞いても何の共感もないでしょ?」

私たちの時代は、社会人になったら車、それも“良い車”に乗って彼女とデートすることがすべてのモチベーションでした。


MVからよみがえる憧れ

いきなりこんな話をしたのは、偶然YouTubeで見た ブルース・スプリングスティーンの『DANCING IN THE DARK』 のMVを見て、ある感情を思い出したからです。

当時の感覚では、このスプリングスティーンのMVや、スティーブ・ペリーの『Oh Sherrie』のMVを見て 「カッコいい!」 と感じ、「いつか自分もそういうことをやってみたい」 と憧れていました。

もちろん、私は世界的なミュージシャンではないので、そんな状況に置かれることは100%ありません。
でも例えば、納得のいかない仕事の現場で「彼女の方が大事」と堂々と仕事を放棄して出て行ってしまうとか、自分のやっている仕事に好きな娘を巻き込んでしまうとか──そういう状況に憧れ、「そういう大人になりたい」と思っていたのです。


「カッコいい」は時代で変わる

この“カッコいい感覚”は、おそらく私の世代なら共有できると思います。
しかし今の世代の目から見れば、それは 「わがまま」「スタンドプレイ」「傲慢」「悪目立ち」 としか映らないのかもしれません。

時代と共に美人の定義も変わります。平安時代の美人は「おかめ」のようなふくよかな顔だった、とよく言われますが、それと同じことなのでしょう。


世代間の断絶をどう扱うか

こうした「分からない状況」に対して、少し前までは私はこう考えていました。
「分からなくてもいい。世代を超えて分かる必要なんてない」

けれども最近は違います。
我々の世代はマイナス成長に対して悲観的になりすぎ、その空気を下の世代に引き継いでしまったのではないか──そう反省するようになりました。

実際、日本が「世界第2位の経済大国」から転落することを、我々はまるで“終わり”のように恐れていました。
確かに地位は変わりましたが、当時想像していたような破滅は起こらなかった。むしろ客観的に見れば、それほどひどい状態ではなく、良い面も少なくありません。
その認識があれば、もっと前向きに次世代へつなげられたのではないかと思うのです。

だからこそ、たとえ伝わらなくても「伝えようとする努力」は必要なのではないかと考えています。
なぜなら、我々だけで楽しんでいる姿は、次の世代には「結局そのツケを押しつけられている」と映るかもしれないからです。


世代は繰り返す

世代というのは、いつの時代も繰り返しです。
私たちバブル世代の前にも、団塊の世代や全共闘世代と呼ばれる人たちがいて、そのしわ寄せを私たちも受けてきました。

だからこそ、その時に何が是で、何が非だったのかを説明する責任 が我々にもあるのではないか──最近はそんなことを考えています。


息子に見せてみよう

今度、息子にこれらのMVを見せて「どう感じるか?」と聞いてみようと思います。

ちなみに少し裏話を加えると、

  • ブルース・スプリングスティーンが『Dancing in the Dark』でステージに引き上げた娘は、実は仕込まれた若手女優。観客の中から即興で選ばれたように見せていますが、実際には誰が選ばれても良いように何人も用意されていたそうです。
  • 一方でスティーブ・ペリーの『Oh Sherrie』に登場する女性は、当時の本当の恋人。しかしその1年後には破局してしまったという経緯があります。

そんな裏事情を知ると、当時夢見ていた「カッコいい」の感覚も、少し違った角度で味わえるかもしれません。

(なお『Oh Sherrie』については、昔アメブロに「あの頃はまだ若かった - Oh! Sherrie by Steve Perry」という記事を書きました。興味のある方はぜひ探してみてください。アメリカ英語の教材としても楽しめる内容だと思います(笑))

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