2025年8月の川崎フロンターレは、まさにジェットコースターのような1か月でした。勝利で勢いを取り戻す瞬間もあれば、守備面の課題が露わになった試合もあり、サポーターとして一喜一憂の連続。ここでは J1第25節から第28節(福岡・新潟・名古屋・町田戦) を振り返りつつ、noteに掲載した詳細レビュー記事をまとめます。単なる振り返りにとどまらず、記事制作の裏話や現場での体験も交えてご紹介します。
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第25節 アビスパ福岡戦(H) ─ 歴史に残る珍ゲームと一体感
前半のうちに退場者が2人──解説者も言葉に詰まるような、歴史に残る珍ゲームとなった今節の福岡戦。フロンターレがホームで福岡に敗れるのは2000年以来、実に25年ぶりの出来事でした。通常ならスタジアムの空気は重く沈み、選手たちは戦意を喪失してしまい、見るに堪えない試合になってもおかしくありません。ところがこの日の等々力は違いました。解説者が口をそろえて「面白かった」と評し、サポーターも「良い試合だった」と誇らしげに振り返る──それほどまでに、チームとサポーターの絆、一体感が際立った一戦だったのです。
長谷部監督も見た目ほどクールではなく、内には鬼木監督と共通する熱いものがあると感じさせました。圧倒的不利な状況においても「勝ち点1を守る」ではなく、「この状況で勝つにはこの方法しかない」と腹をくくり、その戦略をどう選手に落とし込むかを模索していたのではないか──そう思わずにはいられません。
結果は惜しくも敗戦でしたが、内容は「負けてなお誇れる試合」。25年ぶりのホームでの福岡戦敗戦が、むしろチームとサポーターの一体感を再確認させる象徴的なゲームとなりました。
第26節 アルビレックス新潟戦(A) ─ 攻守が噛み合った快勝
新潟戦は、スコア以上に「連敗中の相手を前に生まれる見えない敵(油断・不安・鬼門意識)」とどう戦うかが問われる試合でした。フロンターレは序盤その負の気配に呑まれかけましたが、山口・山本・伊藤という中堅がプレーで自己規律と矜持を示し、流れを引き戻しました。トップダウンではなく現場から立ち上がるリーダーシップが停滞を断つと同時に世代交代の物語でもありました。生え抜きが減るなか、移籍組を含む中堅がクラブの哲学を体現しはじめた兆しこそが最大の収穫でした。
結果は引き分けで勝点3は逃したものの、首位との差は変わらず「希望の灯」は消えなかった。加えて、悪い流れに引きずられに中堅が担う継承の力によって全員で同じ方向を見始めた。
要するに――この試合が示したのは「仕留めきれなかった90分」ではなく、川崎が再起へ向かうための処方箋(現場主導のリーダーシップ×文化の継承×リーダーの自省)であったと思います。
第27節 名古屋グランパス戦(A) ─ 苦境を跳ね返した“総力戦”
前半は2点を先行するも、主力丸山の負傷交代をきっかけに不安定化し、前半のうちに2-2に追いつかれてしまいました。後半はユンカー退場で数的優位を得たにもかかわらず、ちょっとした隙や迷いから流れを支配しきれず、終盤まで勝敗の行方は揺れ動きました。最後はアディショナルタイムに値千金の決勝点を奪い劇的勝利を収めたが、選手たちが倒れ込むほどの消耗を強いられたのは数的優位のフロンターレの方でした。
「2-0」が最も危険なスコアと言われる理由は、ビジネスで言えば「成功のワナ」であり、強い組織ほどむしろ危機感を高めて次の一手を打ち続ける必要があります。また不測の事態には、計画外のリソース対応=コンティンジェンシープランを用意しておくことが重要です。神橋の奮闘が誘発させと思えるユンカー退場はこのことを象徴していると思います。
数的優位にも関わらず苦戦したことは、組織が力を出し切るには集中力と全体の意識統一が不可欠だという教訓を浮き彫りにしと思います。
加えて、サポーターの声援も含めた一体感が組織全体にエンゲージメントを広げました。この勝利には単なる勝点3以上の価値があり、「フロンターレは総力戦が似合うチーム」であることを証明した一戦だったと言えます。
第28節 FC町田ゼルビア戦(H) ─ 打ち合いを制した攻撃力
8月最後の試合となった町田戦は、まさに「打ち合い」の様相を呈しました。序盤から互いに前掛かりで仕掛け合い、ゴール前のシーンが続出。前半に伊藤と橘田の得点でリードするも、町田も力強い攻撃で応酬し、2-2で折り返します。
但し、これは与件、つまり怪我人続出・過密日程による選手コンディションの不良という状況、を踏まえた長谷部監督が選択した「省力戦」=前半は受けて消耗を抑え、後半に仕留めるというゲームプランがもたらした結果と考えます。このゲームプランは逆転されたことで崩れかけたのですが前半のうちに追い付いけことで、後半もこれを維持しました。この結果、後半に入っても一進一退の攻防が続きましたが、終盤に町田を突き放し5-3で勝利することができまし。
この試合は守備面で「失点を減らす」という課題を残したものの、シーズン終盤に向け、攻撃陣の多彩な崩しとフィニッシュ力アップという攻撃の選択肢が広がったことは大きな意味を持っているといえます。
総括と編集後記 ─ 結実と再現性をめぐる1か月
8月の川崎フロンターレは、福岡、新潟、名古屋、町田を相手に3勝1敗という結果を残しました。勝点的には悪くありませんが、その中身は一様ではなく、偶然の要素や巡り合わせに左右された試合も多く見られました。
この4試合を通じて浮かび上がったのは「再現性」というテーマです。勝利を掴んだ試合も、狙ったかたちでの得点と失点抑止を繰り返し実行できたかというと、まだ途上段階にあることは否めません。こうした試行錯誤を繰り返しながら少しずつ形を作り上げていくのがシーズンの流れでもあります。8月はそのプロセスの中で「結実した部分」と「巡り合わせに助けられた部分」が共存した1か月でした。
そして、再現性を持った必然の勝利へとつなげられるかどうかが、残りの試合で問われていくことになるでしょう。
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2025年8月 川崎フロンターレ試合レビュー総括|オオキ ケイ|note
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- 第25節 アビスパ福岡戦(H)
【商社マンが解説】数的不利の先に見えたリーダー像~ リーグ 第25節 アビスパ福岡戦 - 第26節 アルビレックス新潟戦(A)
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