名古屋戦から続いた不安定な試合内容を振り返れば、横浜F・マリノス戦での3-0完勝は一つの結実でした。しかし、その勝利の裏には偶然性や相手のミスも大きく作用しており、「再現性」という視点で見れば課題を残しました。そして、その問いに応えるべき舞台となったのが翌節の多摩川クラシコでした。優勝戦線に踏みとどまれるかどうかを左右する重要な一戦でありながら、アクシデントが重なり巡り合わせの悪さに泣く結果となりました。本記事では、この2試合を振り返りつつ「結実」と「再現性」という対照的なテーマを整理します。
1. マリノス戦 ― 結実の側面と“再現性”の課題
名古屋戦以降、フロンターレは「勝ちながらも試合内容に不安を残す」状態が続いていました。ケガ人が多発し、ポジション配置のやり繰りに追われる中で、選手同士の距離感や守備の連動性が噛み合わず、勝点は積み上げられてもどこか安定感に欠けるゲームが続いていました。
その流れを一応の形で結実させたのが、横浜F・マリノスとの神奈川ダービーでした。結果は3-0の完勝。数字だけを見れば快勝であり、サポーターの気持ちを一気に明るくするインパクトを持っていました。
しかし内容を精査すると、そこには偶然的な要素も強く作用していました。先制点は意図した崩しからではなく、こぼれ球を伊藤が巧みに持ち込んで決めた“結果的な産物”でした。そして試合の流れを決定づけたのは、後半の決定的場面で鈴木が山本を倒し、VAR判定によりDOGSO退場となった場面です。エリソンがPKを決めて2-0とした時点で、数的優位を得たフロンターレが主導権を完全に握る展開となりました。
もちろん、こうした「運」を確実に成果へつなげた点は評価できます。ただし、戦術として積み上げてきた形からの得点や守備の安定感で勝利したというより、相手のミスや不運を取り込んで勝った試合でもありました。したがって、ここで浮かび上がるキーワードは“再現性”です。次節以降も同じやり方で勝てるのか──ここに課題が残ります。
2. FC東京戦 ― “再現性”が試された試合
その問いに答える舞台が、翌節の多摩川クラシコでした。伝統のライバル同士の一戦は、優勝争いの行方にも直結する重要な試合であり、マリノス戦の勝利が本物かどうかを試される格好の機会でした。
ところが、ここで予期せぬアクシデントが発生しました。攻守の要である脇坂が先発から外れたのです。ハッキリとした理由は公表されていませんが、おそらくはコンディション不良によるものと見られます。監督は「後半からの投入」という判断を下しました。
その影響は前半の内容に如実に表れました。中盤でセカンドボールを拾えず、相手の攻撃を受ける時間が長くなります。そして23分、サイドを起点に崩され遠藤に決められ先制点を許しました。以降も守備の背後を突かれる場面が続き、VARに救われたシーンもありました。前半を0-1で終えられたこと自体が、ある意味では幸運でした。
後半、脇坂を投入すると流れは一気に改善しました。ボールが落ち着き、攻撃のリズムが整い、再三ゴールに迫りました。しかし79分にまとめて交代カードを切ったものの、追いつくには至らず。アディショナルタイムには脇坂がネットを揺らしましたがVARで取り消され、最後は小林のヘッドをGKに止められました。再現性を証明すべき試合で、チームは力を示し切れず0-1で敗戦しました。
3. 難しい選択と巡り合わせ
この試合の評価で重要なのは、監督の判断をどう捉えるかだと思います。脇坂を無理に先発させず、後半から出したことは「選手のコンディションを最優先した」妥当な決断でした。長谷部監督は常々「選手は大丈夫と言うが、本当に大丈夫かを見極めるのが監督の仕事」と語っており、その姿勢は一貫しています。
ただし、こうした選択は常に結果論で評価されます。勝てば「温存が正解」、負ければ「投入が遅かった」となるのです。今回は後者に分類されるでしょう。しかし、難しい状況で冷静に判断を下したこと自体は間違いではないと思います。
加えて、舞台が多摩川クラシコという特別な試合であったことも判断を難しくしました。優勝争いの崖っぷち、伝統のライバル、そしてサポーターの期待──条件が重なる中で下した決断は、正解であっても結果が伴わなければ批判の対象となります。まさに“巡り合わせ”の悪さが出た試合だったと言えるでしょう。
4. 総括 ― 2試合の位置づけと今後
マリノス戦と多摩川クラシコ。この2試合を並べてみると、チームの現状がより鮮明になります。
- マリノス戦:勝利という「結実」を得たが、偶然性が強く、再現性には課題。
- FC東京戦:再現性を証明すべき舞台で、意図した形を積み上げられず敗戦。
つまり、今のフロンターレは「運を活かす力はあるが、必然として勝つ力をまだ確立できていない」段階にあるということです。
この敗戦により、数字上はまだ優勝の可能性が残っていても、実質的には大きく後退しました。それでも、残り試合で再現性を形にできるかどうかは、来季への布石として極めて重要になると思います。短期的な勝敗以上に、今の取り組みが必然の勝利につながるプロセスになっているかどうか──その見極めが求められます。
まとめ
マリノス戦と多摩川クラシコは、単なる1勝1敗の結果以上に「結実と再現性」という対照的なテーマを浮かび上がらせました。勝敗を超えた学びをどう未来に繋げるか──ここからが本当の意味での正念場だと思います。
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