2025年8月23日、J1第27節 名古屋グランパス戦。
川崎フロンターレはアウェイ・豊田スタジアムで4-3の勝利を収めました。
試合展開だけを切り取れば、フロンターレを知らない第三者からはこう見えたでしょう──2点先制しながら追いつかれ、数的優位を得ても突き放せず、最後はVARで救われて辛勝。下手をすると負けていてもおかしくなったようなドタバタ劇の勝利と。
これを感動的勝利と評するなら“自作自演”に映ったとしても不思議ではありません。
しかし、フロンターレのサポーターは皆、今のフロンターレの状況が普通ではないことを十分に知っています。チーム戦術やこれからの勝敗にも関わってくることなので、クラブとしては積極的には発表できることではないので、詳しいことは公表されていませんが現在、スクランブル状態なのです。
それは既に前節、新潟戦でも露呈しており、ベンチ入りしたメンバーのうち2人がGKと公式戦デビューも済ませていないような選手数名とベンチにいてもプレーの出来ない選手が名前を連ねていました。
この状態が改善されていないことは、このゲームの4日前の8月19日に行われた練習においても、参加する選手の数が明らかに少ないことは一目瞭然だったようです。
それから4日経った試合当日、どの程度改善されるか?
そう思って、この日のスターティングメンバーの発表を待っていたのですが、状況はあまり改善されていませんでした。今回もスターティングメンバー以外は、戦力として十分に計算できるというメンバーは含まれておらず、スターティングメンバーに相当の負担が強いられることは覚悟をしていました。
この状況での勝ちパターンは、前半、動けるうちに確実にリードを奪い、後半はそれを守りながら、相手の反撃をかわすということが第一に考えられますが、この戦略を遂行する為のキーマン、丸山選手を前半、僅か12分で負傷交代で欠くこととなり、そこから先のプランは見えなくなりました。
この結果、前半の早い段階で2点のリードを奪うことには成功しましたが、前半のうちに2点リードを追いつかれ、数的優位を得ても突き放せず、終盤にはVAR判定に助けられ、その直後に勝ち越しするも、僅か1分後に1人少ない相手に再び同点にされるという乱高下の激しいゲームとなった訳です。
しかし、この試合の本質は「総力戦」でした。
急きょ出場したルーキー神橋選手の奮闘、エリソン選手と伊藤選手の集中力、交代枠が実質ゼロに近い状況でも全員が最後まで走り切った姿。さらにこうしたチームの状況を理解するサポーターの後押しも含め、チーム全員が一つにまとまり、勝利を自分達で手繰り寄せようと必死に戦ったわけです。
今シーズンフロンターレは肝心なゲームで勝てないと指摘され続けてきました。
ここで、勝てばトップのチームとのゲーム差は1ゲーム縮めることが出来る、ここで勝てば優勝争いに加わって行ける、そんなゲームを何回も落としてきました。そこには色々な要因が考えられますが、一番大きな原因はチーム全員で見ているものが違うからだと私は思っています。
キャプテンの脇坂選手がこう語っています。
「タイトルを獲り続けている時は、勝っても誰もプレーに納得しておらず、誰もがああすべきだったのでは、あそこはこうしていればもっと点が獲れたとか、ゲームの後に言い合っていたが、今はそれがない。あの時代を知っている自分達がそれをやっていかなければならないと思っている」
これは、誰かが手を抜いているとか、現状に満足しているとかいうことではなく、チームとしての世代交代が進む中で、タイトルを経験している選手が少なくなってしまい、チームとしてどこまでやればいいのかもわからなくなっている状況にあることをあらわしており、結果、見ているものが個々人で異なっているという状況であるということです。
だから、こうした極限状態のようなチーム状況の中で、総力戦で戦うことによって、チームにかかわるすべての人が一つの方向を目指すことができた結果、得ることのできたこの勝利は単なる「劇的勝利」ではなく、チームとサポーターの底力を示した”総力戦”の意味を示した一戦になったと思います。
その背景と意味を「商社マンの視点」から整理したレビューをnoteに掲載しています。ぜひご覧ください。
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